時定数は「最終的な変化の 63.2% に届くまでの時間」と習います。でも、なぜ 63.2% なのかは、式を眺めているだけではなかなか腑に落ちません。このページでは、底に弁が付いたタンクの液位を動かして確かめます。
シミュレータ
点線:始めの液位 破線:落ち着く先 矢印の太さ:流量(違いが見えるよう強めています)
- 経った時間
- 0 分
- 液位
- 2.00 m
- 進んだ割合
- -
- 63.2% に届いた
- -
円筒のタンクに上から液が入り、底の弁(開度は固定)から出ていきます。最初は入る量と出る量が釣り合っていて、液位は一定です。入口の流量を変えてスタートすると、液位が新しい高さに向かって動きます。
まずは +20% でスタートして、液位の線が 63.2% の線を横切る時刻と、「進んだ割合」を見てください。
このモデルの前提:タンクの中と出口は大気圧のまま、液の密度は一定、断面積は高さによらず一定(1 m²)とし、あふれは考えません。最初の液位は 2 m、最初の流量は 0.1 m³/min です。
なぜ 63.2% なのか:残りの差が 1/e ずつ縮む
入口の流量を +20% にすると、液位は上がり始め、だんだんゆっくりになりながら新しい高さに近づいていきます。
ゆっくりになるのは、液位が上がると底にかかる圧力が上がり、弁から出ていく量が増えるからです。入る量と出る量の差(液位を押し上げている分)は、新しい高さに近づくほど小さくなります。つまり、残りの差が小さいほど、ゆっくり近づきます。
このように「残りの差に比例した速さで近づく」動き方を、一次遅れと呼びます。残りの差を x とすると、
dx/dt = −x / τ
この τ(タウ)が時定数です。解くと x = x₀ · e−t/τ になり、残りの差は時間 τ ごとに 1/e(約 36.8%)に縮みます。
| 経った時間 | τ | 2τ | 3τ | 5τ |
|---|---|---|---|---|
| 進んだ割合 | 63.2% | 86.5% | 95.0% | 99.3% |
63.2% は、時間 τ のあいだに残りが 1/e に縮んだ結果です(1 − 1/e ≒ 0.632)。63.2% という数字を先に決めたのではなく、「残りの差 ÷ τ の速さで近づく」という τ の決め方から出てくる数字です。
シミュレータの「時間の推移」には、最終値と 63.2% の線を引いています。液位の線が 63.2% の線を横切る時刻が、時定数です。
ただ、このタンクの液位は、一次遅れとまったく同じには動きません。入口を −20% にすると、63.2% に届く時刻が +20% のときより早くなります。時定数が液位で変わるためで、続きは同じタンクなのに、時定数が液位で変わるのはなぜ?で動かして見られます。
作り手のメモ
仕事で、蒸留塔の動的シミュレーションを触ったことがあります。中で何が起きているかが頭の中で動いていなかったので、一番簡単なタンク1つから、やり直すことにしました。