時定数とは? 63.2% の意味の続きです。同じタンクで、入口の流量を +20% にしたときと −20% にしたときを重ねると、−20%(液位が下がる側)のほうが早く落ち着きます。同じタンク、同じ弁なのに、時定数が違います。
このページでは、なぜ変わるのかを、液位と出口の流量の曲線で確かめます。
シミュレータ
点線:始めの液位 破線:落ち着く先 矢印の太さ:流量(違いが見えるよう強めています)
- 経った時間
- 0 分
- 液位
- 2.00 m
- 入口 / 出口の流量(m³/min)
- -
- その場の時定数
- -
| 入口の変化 | 落ち着く液位 | 63.2% に届いた | 接線がぶつかる | 95% に届いた | 時定数(始め → 落ち着く先) |
|---|
円筒のタンクに上から液が入り、底の弁(開度は固定)から出ていきます。最初は入る量と出る量が釣り合っていて、液位は一定です。入口の流量を変えてスタートすると、液位が新しい高さに向かって動きます。
まずは +20% で動かし、終わったら −20% に変えて、もう一度スタートしてください。前の結果が灰色の線で残ります。
このモデルの前提:タンクの中と出口は大気圧のまま、液の密度は一定、断面積は高さによらず一定とし、あふれは考えません(液位はどこまでも上がれます)。最初の流量は 0.1 m³/min で固定し、最初の液位は弁の開度から決まります(弁 100% で 2 m。弁を 50% に絞ると、同じ流量を流すのに 4 倍の差圧が要るので 8 m)。
時間の進み方は、弁と断面積で決まる始めの時定数に合わせて早送りしています。入口の変化だけを変えたときは、同じ速さで進みます。
−20% のほうが早く落ち着く
+20% と −20% を重ねたときの数字です。
| 63.2% に届く時間 | 95% に届く時間 | |
|---|---|---|
| +20%(液位が上がる) | 45.5 分 | 140 分 |
| −20%(液位が下がる) | 34.6 分 | 100 分 |
断面積 1 m²、最初の液位 2 m、最初の流量 0.1 m³/min(シミュレータの最初の設定)
63.2% に届く時間(時定数)が、液位が上がる側と下がる側で 10 分ほど違います。
なぜ変わるのか:液位と流量の曲線の傾き
液位が高いほど底の圧力が上がり、弁の前後の差圧が増えて、出ていく流量が増えます。弁を通る流量は差圧の平方根に比例する(差圧は流量の二乗に比例する)ので、
出ていく流量 = k × √液位 (k は弁の流しやすさ)
になります。シミュレータの「液位と流量の曲線」が、この曲線です。
√ の曲線は、液位が低いほど傾きが急です。傾きは「液位が少し動いたとき、出ていく流量がどれだけ変わるか」。急なほど、液位が少し動くだけで出口の流量が入口に追いつき、早く釣り合いに戻ります。だから、液位が低い側のほうが早く落ち着きます。
式で見たい人向けに。タンクの収支は
断面積 × d(液位)/dt = 入る流量 − 出る流量
で、出る流量をいまの点の接線(直線)で近似すると一次遅れの形になり、
時定数 = 断面積 ÷ 傾き = 2 × 断面積 × 液位 ÷ 流量 = 2 × たまっている量 ÷ 流量
が出ます(傾き = k ÷ (2√液位) = 流量 ÷ (2 × 液位))。たまっている量 ÷ 流量は、液がタンクにとどまる平均の時間(滞留時間)なので、弁で抜くタンクの時定数はその 2 倍です。
上の数字では、最初の点で 40 分、+20% で落ち着いた先で 48 分、−20% で落ち着いた先で 32 分。動いている間に時定数そのものが変わっていくので、63.2% に届く時間はその間(45.5 分と 34.6 分)になります。
シミュレータの黒い破線(動き始めの接線)が最終値とぶつかる時刻も、63.2% に届く時刻と少しずれます(+20% で 44 分と 45.5 分)。一次遅れなら同じ時刻になるはずのものがずれるのも、時定数が動いている間に変わるためです。
教科書の一次遅れが時定数を決まった値として扱うのは、いまの点の接線で近似したとき(線形化)の話です。実際のタンクは、運転している液位ごとに時定数が違います。
作り手のメモ
動かす前は、+20% と −20% で、落ち着くまでの時間はなんとなく同じになりそうだと思っていました。根拠はありません。
全然知りませんでした。落ち着くまでの時間がレベルによって変わるのは、へぇと思いました。
液面の高さによって底面の圧力が変わり、弁の差圧が変わる。弁の差圧が変わると流量が変わる。この液面の高さと流量の関係を見たときに、傾きが急なのが、液面が低いとき。したがって、液面が低いときは少し液面が変わると流量が大きく変わって、結果的に釣り合いに戻るのが早い。